経営脳+IT脳が成功を10倍加速させる

「ITコスト削減だ!」 小さな会社が掘る墓穴

「あなたの会社のITコストは妥当ですか?」

「はい、妥当ですよ」と答えられた、小さな会社で業務システムを持って運用されている会社の社長さんには、残念ですが私はお会いしたことがありません。現在の様な、不況になると当然のことですが、あらゆるコストを見直されます。

企業を存続させていく上では、コスト管理は常識ですからね。 ですが、ITに関しては逆にシステム(IT)にかけるコストは、どのくらい
が妥当なのかという質問を度々、頂きますので、今回、整理したいと思います。

まず、よく耳にすることがあると思うのですが、漠然と「売上高の1%」といった話。これは全くの憶測です。この根拠を解き明かしたものなど、わたしの28年間のビジネスシーンの中でも見たこともなければ、聞いたこともありません。ITコストの妥当性というのは、様々な、その会社の環境や、競合の度合いや、業界内でのITリテラシーのレベルの問題などが絡み合い、一律にいくらが妥当かという質問に対する回答は難しいというのが現実です。

ただ、このような不透明さが一因となって、多くの経営者は

「なんでうちはこんなに高額なんだ!」

「ITコストはもっと削減できないのか。削減できるに違いない」

という願望を抱え続けているパターンが多いのも現実です。問題なのは、この願望自体が「ITコストを全体で20%削減しろ」といった単純
な命令につながりやすい点なんです。

「20%」という数字が独り歩きを始める。

十分に吟味されたものならよいのですが、大抵は経営者が鉛筆を舐め舐め・・決めた数字にすぎないことが多いのです。 本来コスト削減というのは投資効率が悪い領域を特定して、それを改善するという前提で実現すべきものであるはずなのに、実際には非常に多くの企業でセオリーを無視した命令が下されているんです。

では、なぜITコスト削減策が、このようなやみくもな施策になってしまうのでしょうか?

それは、ITコストの妥当性について、実態が不透明で全く可視化されていないからなんです。

では、どのように、どのような考え方で可視化していけば良いのでしょうか?

▼ITコストコストを削減するには、まず可視化することが必要です

これにはまず、ITコストを構成する要素をきちんと理解する必要があります。

現在、使っているITやこれから導入するIT(企業の場合はIT=情報システムと考えるとしっくりきますかね)は必ず目的があって導入するものです。ですから「目的を達成するために、このITがどの程度の成果をあげているか(あげるか)」そしてもう一つ 「このIT導入により目的を達成するためのコスト(人・物・金)」。

そう、前者は「有効性」。後者は「効率性」です。ITコストの妥当性を考えるには、この2つの構成要素は分けて考えなければなりません。

なぜ分けて考えなければならないのかというと【有効性と効率性は必ずしも比例しているものではない】からです。

目的に対して成果を上げていない有効性の低いと思われるITコストをやみくもに削減すると,業務効率を大幅に低下させる恐れがあります。現状の業務効率に応じて注意しながら削減しなければならないのです。

このように本来はITコストの有効性と効率性の両面を分析し、可視化するべきなのですがITコストの有効性を整理するにはITコストの目的を定義しなければならず、企業ごとに大きく異るためため、「効率性」に関して整理していこうと思います。

それに「効率性」に目を向けた方がITコストの実態や妥当性を把握しやすいということもあります。 ITコストには情報システムの開発、保守、運用などの複数の業務を遂行するための費用が含まれています。前述したように、これらのITコストを一律に削減してしまうと非常に効率的な 業務まで予算が削減されてしまいかねません。結果的に業務効率を悪化させ、システム自体の有効性を著しく低下させかねないのです。

「有効性」と「効率性」に視点を向けてIT関連業務に対するコストをピックアップし評価する必要があるということが、お分かりいただけたでしょうか。 これこそが、ITコストの可視化になるのです。

「うーん、そんなことしてもこの不景気で全体的に予算がとれないからなぁ」

「焼け石に水じゃないかなぁ」

と思っているあなたに、その辺のリスクについて整理してみようと思います。

▼「有効性」「効率性」を度外視してITコスト削減をした場合のリスク

分かりやすいように、簡単な例で考えてみます。

例えば、「有効性」も「効率性」も最適な状態であるシステムのIT関連業務を5人の担当者が分担しているとして、担当者1人分の人件費を削減したとします。 この場合、このシステムの「有効性」を維持しようと考えるなら、残りの4人が従来担当していなかった業務まで受け持つ必要があることになります。

不慣れであれば、専任の担当者がいる場合よりも作業効率は落ちるはずですよね。さらに、1人当たりの作業が増えることで、これまでそれぞれが担当していた分の作業効率(「効率性」)にまで影響を与える恐れも出てきます。

その結果、システム自体の「有効性」を損ねる可能性があるんです。

こんなコスト削減策は妥当ではないということは想像すれば分かると思います。わたしがソフト会社を経営していた頃、とある水産会社でもこのようなことがありました。

「朝の4:00からオンライン受注した結果で、その日の仕入れを市場で行うというルーチンを持った業務でITコストを削減するために受注スタッフを人件費の安い外国人にした結果、受注業務の効率が低下し市場の仕入れが間に合わなくなった。」

結果、お客様の信頼を落とすことになりました。

こんなことも、ある運送会社でありました。

「これまでシステムの保守契約のもとにシステムの運転(運用)を行ってきて、システム稼働もルーチン化してスムーズになってきたので、もっと効率を高めてコストを削減しようと保守費用と運用業務のITコストを大幅に削減した結果、システムに不具合が発生してダウンしたにもかかわらず、保守費用を捻出できない状態に陥ってしまい、システムを意図的に停止せざるを得なくなってしまいまた。」

このお陰でその月の請求明細情報が把握できなくなり、請求業務が大混乱に陥りました。

いかがですか、これらの事象は現実に起こったことで「有効性と効率性の視点でIT関連業務に対するコストをピックアップし評価していなかった」ことが根本的な原因で起こったことです。

「この不景気でそんなこと言ってられないとにかく削減しなければならない」

と現実論(現在論)を唱える前にあなたの会社のITコストを可視化するべきなんです。ただやみくもに「ITコストを削減せよ」といった、指示を出す経営者やCIO(最高情報責任者)は、「ITコストの妥当性など全く考えていません」と宣言しているに等しいということですね。

これは、経営者やCIO、そして情報システム担当者や関連部門の「無知無能」ということになってしまいます。

「あなたの会社のITコストは妥当ですか?」

 

あとがき

やはり、コンサルをさせて頂く中、様々な会社で同じような問題に遭遇されていることが多いもので、今回の内容も「ITコスト」という、一見、訳の分からない、人任せになってしまいがちなテーマですが、考える方向性が分かってしまえば、社長自らが判断できる内容だと思います。 この様な、目線を持つことが、小さな会社には欠けている部分でもあるんですね。

一人のコンサルタントとして、 有識者から得られる情報というものの価値を考え直してみて頂ければと思います。

FIRTITPRO

戻る

▲このページの先頭へ